Kindleで3巻まで88円だった&他の巻も45%ポイント還元してたので買った。一気読みした
現在13巻まで出てる。全部読んだ
まだ完結していない話なので、コンセプトやテーマ性の話を中心に感想を書こうと思う
それはそうとして急にネットミームでめっちゃ見た「見なよ……オレの〇〇を……」が突然出てきて笑ってしまった
ネットミームの元ネタに衝突して変な笑いが出るやつ久しぶりに食らった
このマンガは、特に子どものスポーツにおける残酷性に目を背けないことを選択している
スポーツに限ったことではないが、基本的に練習の質と量が物を言う世界において、自己の様々な要素を犠牲にして練習量を稼ぐというのは大なり小なり発生している
睡眠時間や余暇の時間を削るべきかどうかという選択はどの世界でもよくなされるもので、例えば私が身を置くエンジニアの世界も「プライベートの時間を勉強に割くべきか」という議論は定期的に蒸し返される
時間と努力を積み重ねる世界において、それを苦に思わない人間がどんどん高みに登っていくのはよくある話である。が、それは同時にそれを本人が選択しているという前提の上に成り立っている
その選択を子供が行った場合、その前提は崩れる。なぜなら子供は価値判断ができるほどの視野が形成されていないからだ
子供にとっては世界とは周囲の人間や僅かな環境だけで成立するもので、その価値観での判断は視野が狭すぎるし、賢い子供は周囲の求める答えを自分の答えのように振る舞ってしまう
そしてこの作品ではその子供のあり方に対して正面から描こうとしている
大人の見栄に犠牲になった子供や子ども同士の相互の影響なども決して目を逸らしていない
悪い影響もいい影響も自覚的にすべて描こうと取り組んでいるように見える
そんな中で、同時にこの作品では大人のあり方からも目を背けていない
大人という立ち位置こそ才能の差が明確に見えたりするし、自我の表出を抑えなければならないときもある
さらに言えば、作中では何度も「子供のために動く行為」が「子供の負担になってはいけない」というジレンマも描かれる
なお作中では「なんでもかんでも犠牲を払えばいいというものではない」というのはある程度共通認識でありそうでもある(一部例外、というか意図的なアンチテーゼで犠牲を考えるキャラクターはいる)
ときとして大人の行動が仇になったり、あるいは子供の意思がかえって大きな失敗につながったり、払う犠牲の大きさを目にしてしまう事があったり、様々な歪みと残酷さが子供のスポーツにはつきものである
そこに目を背けないのがこの作品の誠実なところだと思う
では果たしてその結果、最後の最後に主人公たちがどこにたどり着くのか……は、この作品が終わるまでわからないのだろう たぶん
私は野球が好きで、高校野球もそこそこ見る
高校野球の選手はいろんな時間を犠牲にしているし、いろんな経験も犠牲にしている。結果として野球に打ち込んでいる
数年に一度高校野球ではチーム内の暴力等の犯罪関係のスキャンダルが出回る
これも自己犠牲のスポーツの構造によるもの(さらに言えば指導者と被指導者やレギュラー等の上位下位関係によるもの)で、そうした関係性や環境に由来してしまう
メダリストの作中でも遠征先のホテルで大人を部屋に呼ぶときは部屋の扉を開けておく習慣が出てきたりしている(実際フィギュアスケートで指導者の性的虐待問題が表出した時代があった)
我々はスポーツを鑑賞・消費するとき、そうした紙一重の環境に感動しているのだという心持ちは忘れてはいけないのだろうな、と思う
