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ストーリーは重要でも二番手、世界観とは状況 「荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方」 その2

作成日2025/03/22 20:49:34 JST
最終更新2025/03/22 20:49:34 JST

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続き。今回はストーリー編と世界観編。前回はこちら


ちなみに一応全部読んだので悪役の役割あたりと身辺調査書(自分バージョン)を作るあたりまで書こうと思う

後半の実際の荒木先生の作品での解説はまとめる必要はないし気になるなら自分で読んでねという感じである


というわけでストーリー。ストーリーは重要。それは当然

ただしストーリーは二番手でやはり一番はキャラクター。書きたいストーリーがあったとしてもキャラクターの魅力は絶対に必要

実際昨今のコンテンツはキャラクターで惹いてストーリーで釣るのが王道な感じだし納得感ある。そもそも漫画でまず読む部分ではストーリーを感じ取るのは難しいしやはりキャラクターが必須


ストーリーの役割とは、キャラクターの欠点を補うこと。欠点というのは人格の欠点ではなく、キャラクターの概念上発生する欠点

それは言葉遣いや価値観、ファッション(ビジュアル)などがどうしても時代遅れになってしまうこと

仮に名作であっても古い作品というだけでキャラクターには「古さ」がつきまとう。それを補うのがストーリーの役割

時代を超えた名作というのはキャラクターの魅力が衰えてもストーリーで読者を魅了することができる


魅力的なストーリーの条件は「常に同じ方向に進む」ということ。プラスでもマイナスでもいいから同じ方向に進むこと

このプラスマイナスは状況であったり、成長であったり、あるいはシンプルに力であったり、なんでもいいがとにかく同じ方向に進むこと

これは「俺TUEEEEE」みたいなのをやれというわけではなく、壁にぶつかって乗り越えるという展開をちゃんとやろうという意味

例えば成長しないとか、全然進めないとか、変化がないとか、そういうものがダメと言っている。読者がつまらないから

これらはリアルさを追求するあまり陥るケースで多々ある


またマイナスに進むならひたすらマイナスでも問題ない。闇とか暗黒面とかそういうものを描きたい場合はあり。ただし難易度は高め

一昔前に流行ったバッドエンド系の作品はこういう書き方が合う。マイナスに進む場合はプラスに進んではいけないので、人の闇を描いてるのに突然いい話を挟んだりすると逆に浮いてしまうという感じ


ストーリーの扱いで大事な部分をもう一つ

ルール違反はしてはいけない。ルールというのはストーリーを進める上で決めたこと

もっとシンプルに表現すると「都合の良い展開はしてはいけない」というやつ。突然バカになるとか偶然いいことが起こるとか

急いでいるのに回り道をするとかそういうのもそう。とにかくルールに則って進める必要がある


ストーリーと関係が深い起承転結の話も言及されているので少し触れる

「起(はじまり)」「承(展開)」「転(盛り上がり)」「結(終わり)」はやはり基本。応用すれば「転」を増やしたり、「結」から始めたりとパターンも増やせる

起承転結はストーリーの何を当てるかというより、どのように持っていくかで見た方が良い。例えば日常生活にも物事の起承転結が入っていて、例えばレストランのメニューで前菜から始まりデザートで終わるのもこの起承転結と同じ組み立てを使っているとか

この辺は他の本の話になるがセンスの哲学で触れていたのと同じような感じ

また、大きな軸での起承転結と同時に、連載漫画なら連載1回(1話)の起承転結も考える必要がある。連載時に必ず「結」を見せたいというのは荒木先生談

ちなみに荒木先生の感覚だとジャンプの連載1話の19ページは相性が悪かったらしく、21ページぐらいがちょうどよかったとか(ウルトラジャンプでページ数の成約が取れた)。そのくらい繊細な感覚があったほうがいいということか


次。世界観の話

重要なこととして「世界観にひたりたい」だけではいけないと論じられている

漫画においての世界観は絵としての背景であり、かつキャラクターの置かれる場所でもある。ひたりたいと思わせるのは重要ではあるが、世界観だけで魅了するには説得力と緻密な描写を積み重ねる必要があり、そのためには知識や調査を徹底的に行わないといけない

それらが足りないと雰囲気だけになり、読者にまでイメージが伝わらない(これはよく分かる)

また画力も大事(必要)になり、荒木先生に言わせてみれば、絵で世界観を表現するには大友克洋先生(代表作:AKIRA)や松本大洋先生(代表作:鉄コン筋クリート)ぐらいの画力が必要とのこと。これはよく分かるハードルの高さ……


世界観とは漫画においては「状況」であり、ストーリーのきっかけとなるものであるべき

前巻でも「困難な状況に主人公を置けば自然とストーリーはできていく」と言っており、状況が作れていないと話がうまく進められない

筆者は昨今の若い漫画家志望者が「状況を作れない」ということを「ストーリーを先に作り、後でキャラクターを作るからではないか」と言っている

具体的には「剣と魔法の世界が書きたい→主人公の勇者を作ろう」では行き詰まる。逆にキャラクターを作りそれを世界に置く方がうまくいくのではないかということ


ちょっと個人的解釈で解きほぐしてみる

「めちゃくちゃ強いが何かしらの都合で世間知らずな剣客主人公」を作って、それを「剣と魔法の世界」に置くと考える

キャラクター付けをもっとちゃんとすべきなので、ここに「悪事を許せない」「困ってる人は見捨てない」「騙されやすい」というキャラ付けを追加する。さらに世界観ももうちょっと追記して「辺境に少し大きな街があり、ここに主人公の母親がいる」「数年ぶりに会いに行く必要がある」「街は少し荒廃している」とかにする

すると「世間知らずの主人公が街に行くと、カツアゲにあってるひ弱そうな人物を見つける。悪事であることはわかったので助ける」「助けた人から何かを預かる」「それがヤバい物で……」と展開が進む

この場合、ひ弱そうな人物のキャラ付けもちゃんとすべきだろう(キーキャラクターになるので)し、世界観ももうちょっと組み立てないといけない。あとゴール地点が定まってないのでそれも決める必要がある。主人公の「何かしらの都合」というのもちゃんと埋めないとだめな部分か

でもひとまずストーリーと状況、ひいてはキャラクターと世界観の関係性はわかった気がする


閑話休題。本に戻る

世界観の中でファンタジーとリアリティーの考え方も触れているのでそこも触れる

絵として書く以上、というより作り物である以上ファンタジーであることは忘れてはいけない。実写でもドキュメンタリー映画でも、計算上作っている部分を忘れてはいけない。でもリアリティーがなくていいわけでもない

結局最終的にはバランスとなるが、できないからやらないという消極的なバランスの取り方はすべきではない

作者が自分で「こうしよう」と決めるのが大事。そのため「この時代設定でこの言葉遣いはないなー」と思っていても「そう書こう」と決めたならそう書くべき

逆に「いや、リアルで行こう」と決めたのならその場合もめちゃくちゃリアルにやるべき。頑張って調べて徹底的に描写するのが大事


次回はテーマの話と絵の話

書いてて思ったが個人的な解釈と本の中身の概論をごっちゃにしすぎてるな。まあ自分向けのまとめだからそれでもいいけどそのへんももっと良くしたい

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