デジタルフリーダム(造語)を感じることがあったので書き残しておこうと思う
と、その前にそもそもデジタルフリーダムについて定義的なものを先に述べておこう
デジタルフリーダムとは、電子的な世界における束縛のない自由のことを指す言葉とする
厳密なことをいうと電子的なものごとをデジタルと表現するのはあまり正しくないのだが、コンピュータ世界を表す単語としてはよく使われているのでそういう意味合いで使うことにする
フリーダムという単語には日本語では自由が充てられるが、これは束縛のない自由を意味する単語として使用している
リバティ(Liberty)ではなくフリーダム(Freedom)である。権利的な自由ではなく、束縛されない自由という意味合いを持たせたいと考えた
もしかしたら既存の単語で同様の表現をしている言葉があるかもしれない。まあ個人的メモの意味合いが強いので大目に見てほしい
デジタルフリーダムという単語を思いついたのは以下のニュースが発端だった
これはBluetoothを用いたP2Pアプリケーションだという
このアプリケーションを使えば、サーバを介さずにP2PでE2Eな通信ができる
ヤバいだろう。絶対政府とかが禁止すると思う。ヤバさをわかりやすく伝えると「理屈上だと中国でも政府に完全に内緒でスマホ同士の通信できるぐらいの機能が提供されるっぽい」といえばヤバさが伝わると思う
ジャック・ドーシーはこの「デジタルフリーダム」を夢見ていると思っている
つまるところ「誰にも縛られない世界」である
昔のインターネットにはそのデジタルフリーダムがあった。あったというか、存在が許されていたというか、まあ表現が難しいが、あった気がする
かつてはインターネットによって、ボーダーレスで自由な新しい世界を作ると夢見ていた人は多かった。これで新しい時代が来るぞと誰もが言っていた
結論からしてそんな世界は来なかったのは今の時代で知るところである
ここからは考えになるが、結局その夢は素朴すぎたし純粋すぎたよね、という結論だと思う
そもそもデジタルフリーダムとは、ここでいう束縛されない自由とは無法地帯なのだ。無法地帯が夢というのはフロンティアスピリットでギリギリ許されるものであって、発展した場所が無法地帯だったら大変なことになる
後出しジャンケンの事後孔明だが、インターネットに自由を見出した価値観が無法という綱渡りであることはもっと早く気づくべきだったのだと思う
俺はデジタルフリーダムはもう二度と成立しないと思っている。なぜならば、もう一度いうが、無法地帯だからだ
無法が許される理屈は基本的には存在しない。例外はある。それは、トートロジー的ではあるが、法自体が無法な場合だけだ
ジャック・ドーシーは、厳密には彼と同じような思想を持っている者たちは、世界の法が間違えていると思っているのだと思う
つまるところ法が正常ではない、世界に合致していないという理屈なのだと思う
法をまともに学んだものではないので法に関しての話はできないが、現状の電子世界の法は現実の法をなんとか拡張して対応していることもありそういう思想が強いのだと思われる
bitchatはその技術的方針だけ見れば、どう考えても今の世界では成立しない。流石に作っているうちに考えつく。そうでなければ技術に素朴すぎるが、Twitterの経営をしていた人物が法の制限を理解していないわけがないだろう
でも彼は成立すると考えている。正確な意味での「確信犯」だ
私は彼の考える自由はある程度共感できる。オールドインターネットに僅かながら触れていた経験があるのでその気持ちはわかるし、あらゆる縛りが――国境も人種も民族も――ない世界だと考えればそれは一定の正義ではあろう
今なおその自由を夢見ているのは正直に言って尊敬する
すでに私はインターネットより現実世界の方が自由だと思っている。犯罪ならインターネットよりリアルでやったほうが問題になりにくいとすら思っている(当然だが犯罪を推奨するわけではない)
世界が、人々や企業がインターネットに軸足を移した以上、リアルよりインターネットの比重が大きくなるのは当然だった。それすなわち世界はすでにリアルに軸足を移していないのだ。だからリアルのほうが物事が問題にならないと思っている(とはいえいつリアルがインターネットに、また逆に侵食するかされるかはコントローラブルではないのだが
かつての自由は、例えばインターネット上にある有象無象のデータはいくらでもコピーできるという自由はすでにインターネットには存在していない。インターネットに公開されたデータは回収不可能という不文律を意識している人は少数派だろう。自由さの対価が理解されていないならその自由さも不要なのだ
皮肉にも最も新しくその手の自由を最大限に利用したのはいわゆるAI技術だったが、これがどのように世界に受容されているかは見ての通りである
ジャック・ドーシーははまだ夢見ているようだ。インターネットで成立しなくてもP2Pのメッシュネットワークなら成立すると考えている
実際、理論的には成立する。今後AppleもGoogleも外部アプリストアを有効にする都合、この手のアプリ自体がたとえ法規制があってもアンダーグラウンドに配布され続ける可能性はある
彼らはそれが正しいと思っているのだろう
もし自分がその自由を手にしたらどうするか考えるのだが、いやはや悲しいことに、悪いことに使ってしまうだろうなぁという気持ちがある
だが同時に悪事を働かない縛りを自身に当ててそのアウトローに手を出すという自分がいるような、そんな気持ちも否定できないでいる
プラットフォームに縛られたくなくてこんなサイトを作っているのだから、どちらかといえばアウトロー側に近い存在という自覚はあるのだが

